バランスドネットワーク理論
「バランスドネットワーク」という言葉は、Computational Neurosience界隈では割とよく聞く言葉じゃないのかな、と思うのですが、日本語で検索をかけても引っかかる文献があまりないので、勉強がてらにメモを残すことにしました。下記の記事が綺麗にまとまっていそうだったので、その要約になっています。管理人はこの分野に関してほぼ素人なので、間違いなどありましたらご指摘いただけると幸いです。
Pierre Yger » The Balanced Network
背景
大枠として、in vivo実験で観察されるニューロンの不規則な発火をネットワークを介してモデリングしたい、という要求がある。 この際、天下り的にネットワークに確率的なinputを与えないとすると、ニューロンに大きな揺らぎを導入して不規則性を付与することになる。具体的には、興奮性ニューロンと抑制性ニューロンが重み付き結合を介して閾値を下回った状態で釣り合い、揺らぎが上振れした時に閾値を超えてスパイクする。
バランスドネットワークとは
integrate-and-fire modelのニューロンで形成されたスパースなネットワークのモデル。上記のような仕組みで不規則な発火を実現する。
- 興奮性ニューロンと抑制性ニューロンの二つの集団からなり、それぞれのニューロンは確率的に重みを持って結合している。
- 一般に、ニューロンは相互の結合以外にもいくつかのパラメータの影響を受ける。外部からのノイズを入力として受け取るケースなどがメジャー。
ネットワークの動態は、同期的/非同期的(ニューロン集団について)、規則的/不規則的(特定のニューロンについて)などの観点から分類することができる。
- 同期的/非同期的の分類は、特定集団での発火率が一定に近いかどうかで判定することができる。一定に近ければ非同期的で、振動していれば同期的。
- 規則的/不規則的の分類は、変動係数を用いて判定されることが多い。変動係数は、ポアッソン分布に基づく発火であれば1に近く、発火が規則的であればあるほど0に近づく。
in vivoでの発火計測では変動係数が1に近い値を示すことが多く、そのため、モデルも非同期現象の再現に焦点を当てることが多い。
上図はネットワークの動態を先の観点から4種類に分類したもので、同期的/規則的(左上)、同期的/不規則的(右上)、非同期的/規則的(左下)、非同期的/不規則的(右下)となっている。